ニュース -  「NEWS」加藤シゲアキ、吉川英治文学賞新人賞受賞…アイドル初の快挙「もう甘えられない」

吉川英治文学賞が2日、発表され、NEWSの加藤シゲアキ(33)の著書「オルタネート」(新潮社)が新人賞に選ばれた。ジャニーズ所属タレントの文学賞受賞は初で、現役アイドルとしても過去に例はない。受賞会見で、喜びとともに「緊張感をもって、今後の作家生活をスタートする」と語った。新人賞は候補6作から武田綾乃さん(28)の「愛されなくても別に」(講談社)と同時受賞。文学賞は村山由佳さん(56)の「風よ あらしよ」(集英社)が選ばれた。4月9日に贈呈式が行われる。
金屏風(びょうぶ)を背に、加藤は緊張をにじませながら喜びの弁を語った。「もう甘えられない。(作家を)やめるということはできなくなった。そういう体になってしまった」と文学新人賞の重みを、しっかりと受け止めた。
受賞の知らせは、ジャニーズ事務所の会議室で受けた。“待ち会”は、あえて1月20日に受賞を逃した直木賞と同じ状況だった。アイドルとして初めて候補に名を連ねた直木賞。落選は正直に「悔しかった」という思いがこみ上げてきたという。その思いを晴らしたい一心で同じ状況に身を置いた。会見直前には、選考委員を務めた伊集院静氏と会話を交わして「こういう時は、とにかく喜べ」と声をかけられた。受賞の驚きとともに「今は頑張って喜ぼうかなと」と照れくさそうにした。
本業はアイドルだ。12年「ピンクとグレー」で作家デビューしてから、ずっとコンプレックスと向き合ってきた。「僕はジャニーズ事務所のタレントという立場で、話題で書かせていただいたと思っていた。(作家の中に)横入りしたような感覚がずっとあった。それでも文芸界、作家の方が温かく歓迎してくださった。今回、賞をいただいたことで、少しは恩返しできたかなと。ここがスタートかなと思います」。正真正銘の作家として大きく確かな一歩を記した。
映画化(16年)もされたデビュー作の出版から、ちょうど10年目。「執筆時はちょうど10年前。2月から3月にかけて。忘れもしない(東日本大)震災もあって。強烈な時間だった」。出版時に書店を回った際に「忘れられない」という書店員の言葉を呼び起こす。「書き続けないと応援できないから」―。
「そこから振り返ってみれば長い作家生活だと思うけど、10年間やめずに続けてきたのが今につながっているのかな。10年前の自分を少し褒めたい」
5作目となる長編小説は、高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」を舞台に、3人の若者の運命が交錯する青春群像作品。直木賞や本屋大賞にノミネートされるなど話題を呼び、15万1000部(8刷)のベストセラーに。また、念願の文学新人賞も手にした。
受賞理由のひとつに「伸びしろ」も挙げられた。「受賞した心持ちでいうと、これは甘えられない、と。今までもプロだという自覚を持って書いていたけど、もう周りの人も甘やかしてくれない。伸びしろという言葉は新人の頃しか言ってもらえない。緊張感をもって、今後の作家生活をスタート。ワクワクもしていますし、恐ろしくもある」。より強い自覚を胸に、また新たな作品を生み出していく。
◆加藤 シゲアキ(かとう・しげあき)1987年7月11日、大阪府出身。33歳。99年にジャニーズ事務所に入所し、2003年にNEWSのメンバーとしてデビュー。10年のテレビ東京系「トラブルマン」で連続ドラマ初主演し、同年青山学院大法学部卒業。11年11月に本名の「加藤成亮」から改名。今年の出演作にNHK「六畳間のピアノマン」、日テレ系「二月の勝者―絶対合格の教室―」など。
◆吉川英治文学新人賞 1980年から創設された文学賞で、公益財団法人吉川英治国民文化振興会が主催。吉川英治文学賞、文庫賞などと並行し審査される。大衆文学の新人や中堅の作家が対象で、過去に北方謙三氏、伊集院静氏、宮部みゆき氏、伊坂幸太郎氏、池井戸潤氏らが受賞している。正賞として賞牌、副賞として100万円と置き時計が贈られる。
◆選考過程
新人賞候補6作から、最終的に「タイタン」(野崎まど著)を含めた3作の決選投票で「愛されなくて―」と同時受賞が決まった。重松清氏が選考委員を代表して「非常に清新でさわやか」と評価。他の選考委員の言葉として「青春のモヤモヤがよく描かれている」「登場人物が多いが、一人一人しっかり描かれている」などと挙げた。また「小説新潮」での連載から作品に触れていたという選考委員は「(連載から)自己検証して推敲(すいこう)しながら、より良い作品になっている」と伸びしろが受賞の要因のひとつになったとした。
◆加藤シゲアキ著作リスト
▼「ピンクとグレー」(12年)
▼「閃光スクランブル」(13年)
▼「Burn.―バーン―」(14年)
▼「傘をもたない蟻たちは」(15年)
▼「チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)」(17年)
▼「できることならスティードで」(20年)=エッセー
▼「オルタネート」(20年)

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